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2011.01.01

シェットランド200g

少し前にニット雑誌を読んでいて気になった記述。英国伝統ニットの特集号でフェアアイルセーターの原料、シェットランド・ヤーンについての記事だったのだが・・・要は「シェットランドという羊は体が小さく、(糸にする)フリースは200gほどしか取れない」という内容。

フリース(刈った羊の毛)を扱う紡ぎ手の方ならご存知と思うが、いくら小さいとは言っても。シェットランドは1頭につき1㎏前後のフリースが取れる。個体差はあるにしろ、日本の本や外国のブリーダーのページにも1~1.5㎏と書いてあるはずだ。200gはいくらなんでも少なすぎる。

納得できなくて(この辺が私らしいのだが)、思い余って雑誌編集部に疑問のメールを送ったところ、お返事をすぐにいただいた。いわく、取材した方が現地で聞いたのは、裾物などを除いて糸になる部分を選別していくと200gになるのだと。しかし本来は裾物を除いてガッツリ使える部分を「フリース」と呼ぶのであって、それが200gとは、よほど小さい手乗り羊になってしまう。その時は「スコットランドにも問い合わせていますので、返事は後日」とも書き添えられていた。

そしてつい先日、その「後日」のメールをいただいた。

それによると、やはりシェットランドヤーンとしてメーカーが使うのは1頭につき200g前後のフリースであるとのこと。ただしフリース全体量では1kg前後ある、と。想像するに、糸として使うのは質の良い200gと言うことなのか。

それにしても「200gしか取れません」と「1㎏の中の200gを使います」では言葉の印象が全く違ってくるから、ややこしい。そして編み手と紡ぎ手というのは物凄く近い存在なのに、発想の違う世界なんだと思い知らされた。編んでいるならもっと羊のことを知って欲しい・・・と思う。

なので今回文章を書いた方が私の質問を物凄く気にして、スコットランドまで再度問い合わせ、またご自分で調べていただいたことに申し訳ないと思いつつも、そうやって真摯に羊に寄り添ってくれたことがとても嬉しかった。

Pict4965

ブログへの掲載を承諾いただいた雑誌:毛糸だま編集部さま、そしてスコットランドまで問い合わせをいただいたユーロ・ジャパン・トレーディング・カンパニーの横山様にこの場を借りて改めて御礼申し上げます。

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コメント

なるほど。でも、1キロなんですね。
ひでさんのおっしゃるとおり、誤解を招く表現ですよね。
でも、ちゃんと回答をくださるとは、丁寧な編集さんです。

毛糸を使っていても、羊毛から出来ていることまで意識している人は少ないんでしょうね。
洗ってカードかけてある羊毛ばかり使っている人が、汚毛を指先でつまんで顔をそむけて、いや~な顔をするのもどうかなぁって思いますが。

投稿: メリノ | 2011.01.03 00:58

メリノさん
文章を書いた方が、私の質問を物凄く気にしてくれたそうです。もちろんそれは嬉しいことですが、ニットとという手仕事の分野ですら、原料がどうやってくるか不明瞭になっているのはどうだ?と不安になります。

紡ぐ人でも・・・いらっしゃるんですねぇ。食べることもそうですが、他の生き物を糧にしているんだと言うこと、製品だったら誰かの労働力がその裏にあること、その辺りが見えない(見せない?)世の中なのでしょうね。きっと。

投稿: 新井ひで | 2011.01.03 11:58

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