少し前にニット雑誌を読んでいて気になった記述。英国伝統ニットの特集号でフェアアイルセーターの原料、シェットランド・ヤーンについての記事だったのだが・・・要は「シェットランドという羊は体が小さく、(糸にする)フリースは200gほどしか取れない」という内容。
フリース(刈った羊の毛)を扱う紡ぎ手の方ならご存知と思うが、いくら小さいとは言っても。シェットランドは1頭につき1㎏前後のフリースが取れる。個体差はあるにしろ、日本の本や外国のブリーダーのページにも1~1.5㎏と書いてあるはずだ。200gはいくらなんでも少なすぎる。
納得できなくて(この辺が私らしいのだが)、思い余って雑誌編集部に疑問のメールを送ったところ、お返事をすぐにいただいた。いわく、取材した方が現地で聞いたのは、裾物などを除いて糸になる部分を選別していくと200gになるのだと。しかし本来は裾物を除いてガッツリ使える部分を「フリース」と呼ぶのであって、それが200gとは、よほど小さい手乗り羊になってしまう。その時は「スコットランドにも問い合わせていますので、返事は後日」とも書き添えられていた。
そしてつい先日、その「後日」のメールをいただいた。
それによると、やはりシェットランドヤーンとしてメーカーが使うのは1頭につき200g前後のフリースであるとのこと。ただしフリース全体量では1kg前後ある、と。想像するに、糸として使うのは質の良い200gと言うことなのか。
それにしても「200gしか取れません」と「1㎏の中の200gを使います」では言葉の印象が全く違ってくるから、ややこしい。そして編み手と紡ぎ手というのは物凄く近い存在なのに、発想の違う世界なんだと思い知らされた。編んでいるならもっと羊のことを知って欲しい・・・と思う。
なので今回文章を書いた方が私の質問を物凄く気にして、スコットランドまで再度問い合わせ、またご自分で調べていただいたことに申し訳ないと思いつつも、そうやって真摯に羊に寄り添ってくれたことがとても嬉しかった。
ブログへの掲載を承諾いただいた雑誌:毛糸だま編集部さま、そしてスコットランドまで問い合わせをいただいたユーロ・ジャパン・トレーディング・カンパニーの横山様にこの場を借りて改めて御礼申し上げます。